泌尿器系のがん
健診などで尿潜血反応が陽性と診断されることがあります。尿鮮血反応1+〜2+までの場合、検査しても何も異常が見つからないことも多いですが、稀に泌尿器系のがんが隠れている可能性があります。
目で見て尿の赤さを確認できる肉眼的血尿はさらに注意すべきもので、膀胱がんを始めとする尿路系悪性腫瘍の可能性が高くなります。血尿が見つかった場合、ほかに症状がないからと放置せずに、お早めに泌尿器科をご受診ください。
前立腺がん
前立腺は前立腺に発生する、男性のみに現れるがんです。近年、前立腺がんの患者さまが増えており、男性においては、大腸がん、胃がん、肺がんを抑えて罹患数1位のがんとなっています。前立腺がん自体に初期症状はあまりありませんが、進行すると血尿や排尿困難、骨に転移することによる腰痛などがみられる場合があります。
早期発見のためには血液検査による前立腺腫瘍マーカー(PSA)が有効です。前立腺がんの罹患率が急速に上昇する50歳以上の方は、この検査をお受けになることをお勧めします。症状のない方でも当院では自費にてPSAを測定することができますのでご利用ください。なお、PSAは一般的には4以上が前立腺がんの疑いがあると判断しますが、前立腺肥大症や前立腺炎といった良性疾患でも数値が上昇することがありますし、年齢が若ければ4未満でも前立腺がんの存在を疑う場合がありますので、4前後の数値であれば泌尿器科専門医の診察をお勧めします。疑いが強い場合はMRI検査などを追加したり、針生検とよばれる方法でがんの存在を確認しに行く必要があります。
治療としては手術療法、放射線治療、ホルモン療法があります。進行例には抗がん剤を用いることもあります。手術療法としては現在ではロボット補助下前立腺全摘除術(RARP)が一般的です。放射線治療には小線源療法、外照射療法があり、それぞれ単独で行う場合もありますし、併用して行うこともあります。ホルモン療法は1〜6ヶ月に1回の精巣機能を抑える注射、または外科的に両側精巣を摘除する手術にて行なうのが基本で、さらに内服を併用する場合があります。
治療方針は患者さまの年齢や体力、合併症の有無、社会状況、その患者さま個人が持つ価値観を加味して主治医と相談して決定していくこととなりますので、一概に前立腺がんのステージだけで決定できるものではありません。
当院でも前立腺がんに対しては基本のホルモン治療のみであれば対応可能ですが、その他の治療方針が望ましい方に対してはたとえ患者さまが希望されましても、医師の責務として他院での治療をお勧めしますので予めご了承ください。
膀胱がん
膀胱がんは膀胱内に発生するがんのことです。日本では年間約2万人が膀胱がんと診断されるといわれ、男女共に60歳頃から増えはじめて、高齢になるほど発生頻度が高くなります。男女比は約4:1と、とくに男性に多くなっています。尿路上皮臓器(腎盂、尿管、膀胱)の中では膀胱がんの罹患数が最も多くなっています。
症状として代表的なものは無症候性肉眼的血尿で、痛みなどの症状を伴わないのが特徴です。ただし、治療を受けてもなかなか治らない頻尿などの症状がある時に膀胱がんが隠れて存在している場合も稀にあります。
膀胱がんが疑われる場合の検査として、検尿検査、尿細胞診、膀胱鏡検査、を行います。このほか、がんの深さや転移の状況を調べるためにCTやMRIといった画像検査を行う場合があります。
膀胱がんの治療はまずは膀胱鏡を利用して腫瘍を切除する経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を行います。切除した標本を顕微鏡で検査する病理検査を行い、追加治療の是非を検討します。追加治療の種類としては膀胱内注入療法や、膀胱を全て摘出する膀胱全摘除術、全身化学療法、放射線療法などがあり、がんの部位や進行度合い、転移の状況などを踏まえて選択、あるいは組み合わせていきます。
腎がん
腎がんは腎臓の実質(尿を作る部位)に発生するがんのことです。腎臓の実質には、「糸球体」でつくられた尿のもとから、水分や様々な物質を再吸収したり老廃物を排泄したりして尿をつくる「尿細管」があります。この尿細管の中の細胞にがんが生じると腎がんになります。
腎がんでは初期症状がほとんどなく、人間ドックや検診、他疾患精査などの際に超音波(エコー)検査やCT検査で偶然発見されることが多いです。精密検査では造影剤を使ったCTやMRIを追加して精査することが一般的です。
腎がんの治療は、外科的手術によってがんを取り除くことです。基本的には2つある腎臓のうち、がんのある側を全て摘出する腎摘出術が行われます。腎臓は1つを摘出したとしても、残ったほうの腎臓の機能が正常であれば支障なく生活することが可能です。ただし、早期に発見できれば、がんの部分だけを切除する腎部分切除術が行われる場合もあります。
手術方法には様々な種類があり、腹腔鏡下手術、ロボット支援手術、開腹手術などがあります。手術以外の治療法としては、薬物療法として分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬などがあります。